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群馬大学 生体調節研究所

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アポトーシス抵抗性細胞の細胞死

山田貴佑記1、吉成祐人2、当房雅之2、羽原興子1、西村隆史1,2,* (1. 理化学研究所生命機能科学研究センター成長シグナル研究チーム(研究当時)、2. 群馬大学生体調節研究所個体代謝生理学分野、*: 責任著者)

概要

 個体代謝生理学分野の西村隆史教授らの研究グループは、モデル生物であるキイロショウジョウバエを用いて、細胞死に抵抗性のある細胞が細胞死に至る仕組みの一端を解明しました。

生体内の細胞は、日々様々なストレスや損傷を受けますが、その多くは修復されます。一方、重篤な損傷を受けた場合、細胞はプログラムされた細胞死(アポトーシス)によって自ら死んでいきます。しかしながら、生体内の各組織において、細胞死の誘導刺激に対して細胞がどのように応答するのか、また発育時期による応答の違いについては、理解が不十分でした。今回、研究チームは、キイロショウジョウバエの脂肪体と呼ばれる細胞が、DNA損傷やがんストレスなど様々な細胞死の誘導刺激に対して抵抗性があり、細胞死が生じないことを見いだしました。一方、細胞死に対して抵抗性を持つ脂肪体で特異的に細胞死が起きる遺伝子変異体を新たに発見しました。この変異体では、細胞内のタンパク質恒常性が崩れて、細胞死のシグナル伝達経路が活性化していました。また、細胞死は発育初期では起きないものの、発育進行に伴い誘導される時期特異性が存在しました。さらに、この変異体では、DNA損傷や飢餓ストレスによる細胞死が早期に誘発されることから、タンパク質恒常性の破綻による細胞種特異的な脆弱性があることを明らかにしました。本研究成果により、がん細胞などの細胞死に抵抗性のある細胞を、細胞死に誘導するための新たな生体モデルとしての利用と応用が期待されます。

 

プレスリリース資料はこちらをご覧になってください。

原著情報

Yamada T, Yoshinari Y, Tobo M, Habara O, and Nishimura T. Nacalpha protects the larval fat body from cell death by maintaining cellular proteostasis in Drosophila. Nat Commun. 2023 Sep 1;14(1):5328.

オンラインURL

https://www.nature.com/articles/s41467-023-41103-1

研究室URL

https://sites.google.com/view/nishimura-lab/

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