群馬大学生体調節研究所は、内分泌・代謝システムの研究を中心に、細胞レベルから動物個体、ヒトに至るまで多様な研究材料を用いて生体の恒常性を司る分子メカニズムの解明を目指しています。また、その破たんにより引き起こされる疾患、特に糖尿病、脂質異常症、肥満症、ガンなどといった生活習慣病に焦点をあてて研究を推進しています。
本研究所は、1963年に設置された内分泌研究所に起源を有します。内分泌研究所が設立された当初は、群馬県では地理的事情で、海藻の摂取不足による甲状腺疾患が多かったことを背景に、甲状腺疾患の研究を中心に行っていました。その結果、甲状腺ホルモンの生成や作用の仕組み、小腸から分泌されるホルモン、モチリンの機能解明など多くの重要な研究成果を挙げてきました。その後、変化した時代のニーズに応えるべく1994年には生活習慣病をターゲットとする「生体調節研究所」として改組され、生まれ変わりました。現在では内分泌代謝学研究に特化した唯一の国立大学附置研究所として活動しています。2023年にはおかげさまで研究所創設60周年を迎えました。これまで長きに亘り、国内外の関連領域研究者に対し、独自の研究リソースを提供し、様々な共同研究を通じてサポートすることにより、数多くの研究成果を挙げてきました。その貢献が認められ、生体調節研究所は2010年度より全国共同利用・共同研究拠点として認定を受けています。生活習慣病の原因と考えられる疾患感受性や病因の一部は解明されましたが、まだ多くは謎のままで残されています。生体調節研究所では、インスリンやグルカゴンなどの膵島ホルモンや脂肪細胞など、肥満症や糖尿病などの生活習慣病に直結する研究を専攻する研究者に加えて、線虫やショウジョウバエ、酵母といった様々なモデル生物を駆使して最先端の基礎生命科学を探求する研究者たちが結集し、日々深化・複雑化する内分泌代謝学のニーズに応えるべく、次世代の生活習慣病研究の開拓と疾病対策にむけた研究に取り組んでいます。対象とする研究分野もゲノム・エピゲノム制御や腸内細菌による生活習慣病制御など時代の進歩と共に多様化しています。
2023年度には、ヒト膵島研究や全世代での代謝研究を加速する研究ユニットの設置を盛り込んだ組織整備事業が文部科学省により採択され、これまで研究所が培ってきた基礎研究の成果を、よりトランスレーショナルな方向に発展させることが期待されています。 生体調節研究所が果たす役割は今後益々大きくなると考えられ、この拠点活動を通じて、多くの関連研究者が研究機関・国をこえて連携することにより、糖尿病や肥満症等、生活習慣病に関連する疾患の病態解明・治療開発とともに、新たな研究者ネットワークの構築が促進することを期待しております。生体の恒常性の理解や疾患の病態・病因解明に加えて、肥満症や糖尿病の根本治療にむけた取り組みにも、いっそう力をいれてゆきたいと考えています。今後ともご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。