佐藤幸市1, 小笠原英明2, 池田祐一2, 熊谷英敏2, 井上亮太1, 都野貴寛1, 松永耕ー1, 石田恵美1, 白川 純1,3,* (1. 群馬大学生体調節研究所代謝疾患医科学分野、2. 株式会社タンソーバイオサイエンス、3. 横浜市立大学医学部分子内分泌・糖尿病内科、*責任著者)
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今回、代謝疾患医科学分野の白川純教授,佐藤幸市准教授らの研究グループは、株式会社タンソーバイオサイエンス(東京)との共同研究で、糖尿病治療薬であるメトホルミンが、リゾホスファチジン酸(LPA: Lysophosphatidic Acid)受容体を抑制することにより抗腫瘍効果を示す可能性を発見しました。
Gタンパク質共役受容体(GPCR: G protein-coupled receptor)は、癌治療の標的として知られていますが、抗腫瘍効果を持つことは知られているメトホルミンのGPCR への影響は不明でした。今回、200種類のGPCRに対してパネルアッセイを実施し、LPA受容体にメトホルミンは強い抑制作用を示すことがわかりました。また肝がん細胞株において、メトホルミンは、Gqタンパク質を介してLPA受容体による細胞内のカルシウム上昇や細胞の接着、細胞遊走を抑制しました。
日本人の糖尿病を有する人でも悪性腫瘍(癌)は死因の1位であり、特に肝細胞癌などのリスクが高くなることが報告されています。本研究によって、糖尿病治療薬の新たな標的を介した抗腫瘍効果の可能性が示され、肝細胞癌の治療法開発に貢献すると思われます。
Paper information
“The antitumor effects of metformin are potentially mediated through LPA receptor inhibition.”
佐藤幸市, 小笠原英明, 池田祐一, 熊谷英敏, 井上亮太, 都野貴寛, 松永耕ー, 石田恵美, 白川 純(代謝疾患医科学分野、株式会社タンソーバイオサイエンス、横浜市立大学医学部)
Diabetes Res Clin Pract誌(国際糖尿病連合: IDF)
公開日:2025年3月10日
Online URL
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0168822725001081