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群馬大学 生体調節研究所

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糖尿病に関わるグルカゴンの新たな制御メカニズムを発見 ~膵α細胞を活用した治療法への手がかり~

都野貴寛1,2, Li Jinghe1, 西山邦幸1, 川沢(今村)百可3, 井上亮太1, Ong Yajima Esther1, 西山晃4, 矢部茂治5, Tatsuya Kin6, 大河内仁志5, 田村智彦4,7, A. M. James Shapiro6, 親泊政一8, 北村忠弘9, 寺内康夫2, 白川純1,2,* (1. 群馬大学生体調節研究所代謝疾患医科学分野、2. 横浜市立大学大学院医学研究科分子内分泌・糖尿病内科学、3. ペンシルバニア州立大学医学部、4. 横浜市立大学大学院医学研究科免疫学, 5. 国立国際医療研究センター研究所細胞組織再生医学研究部、6. アルバータ大学臨床膵島研究室、7. 横浜市立大学先端医科学研究センター、8. 徳島大学先端酵素学研究所生体機能学分野、9. 群馬大学生体調節研究所代謝シグナル解析分野、*責任著者)

About

今回、代謝疾患医科学分野の白川純教授らの研究グループは、アルバータ大学(カナダ)、徳島大学等との共同研究により、糖尿病に関与する膵α(アルファ)細胞において、グルカゴンの分泌を抑え、さらに膵β(ベータ)細胞へと分化転換(細胞の性質が変化)する新たな仕組みを発見しました。
膵臓の膵島に存在する膵α細胞は、血糖値を上昇させるホルモンであるグルカゴンを分泌し、膵β細胞は血糖値を下げるインスリンを分泌します。2型糖尿病では、インスリン分泌だけでなくグルカゴン分泌にも異常が生じ、とくにグルカゴンの過剰分泌が高血糖を悪化させることが知られています。
今回の研究では、糖尿病の発症や進行に深く関わる「小胞体ストレス」に着目しました。これは高血糖や炎症などのストレスによって細胞内の小胞体に異常タンパク質が蓄積し、細胞機能に障害をもたらす現象です。これまで小胞体ストレスは主に膵β細胞の機能障害や細胞死との関連で研究されてきましたが、膵α細胞への影響はほとんど分かっていませんでした。
白川純教授らは、糖尿病治療薬イメグリミンにより、膵β細胞の小胞体ストレス応答が改善されることをこれまでに報告しており、今回、膵島の1細胞RNAシーケンシング技術を用いて、イメグリミンが膵α細胞でも小胞体ストレス関連遺伝子の発現を増加させることを明らかにしました。これにより、グルカゴンの分泌が抑制されるとともに、膵α細胞は未熟な状態(脱分化)となり、最終的にはインスリンを分泌する膵β細胞様の性質を獲得することが示されました。これらの現象は、マウスの膵島や糖尿病モデルマウスだけでなく、ヒト膵島およびiPS細胞由来のグルカゴン産生細胞でも再現されました。

本研究により、小胞体ストレス関連の分子が膵α細胞におけるホルモン分泌や細胞運命の制御に深く関わっていることが明らかになり、膵α細胞を標的とした新たな糖尿病治療法の開発につながる可能性が期待されます。

 

Paper information

“Imeglimin suppresses glucagon secretion and induces a loss of α-cell identity”
都野貴寛, Jinghe Li, 西山邦幸, 川沢(今村)百可, 井上亮太, Esther Ong Yajima, 西山晃, 矢部茂治, Tatsuya Kin, 大河内仁志, 田村智彦, A. M. James Shapiro, 親泊政一, 北村忠弘, 寺内康夫, 白川純.

Online URL

https://www.cell.com/cell-reports-medicine/fulltext/S2666-3791(25)00327-1

Lab HP

https://diabetes.imcr.gunma-u.ac.jp/

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