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群馬大学 生体調節研究所

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インスリン産生膵β細胞を調節する受容体の役割を解明 ~二つの異なる作用で膵β細胞の機能維持に寄与~

白川純1,2,3,*, Dario F. De Jesus3, 都野貴寛1, Giorgio Basile3, 井上亮太1, 高谷具純3, 西山晃4, Erin R. Okawa3, 田村智彦4, 寺内康夫2, Rohit N. Kulkarni3,* (1. 群馬大学生体調節研究所代謝疾患医科学分野、2. 横浜市立大学大学院医学研究科分子内分泌・糖尿病内科学、3. ハーバード大学ジョスリン糖尿病センター、4. 横浜市立大学大学院医学研究科免疫学、 *責任著者)

About

今回、代謝疾患医科学分野の白川純教授らの研究グループは、ハーバード大学医学部ジョスリン糖尿病センター等との共同研究で、インスリンをつくる膵臓の細胞「膵β(ベータ)細胞」に存在する受容体(刺激を受け取り伝達するタンパク質)の新たな役割を発見しました。この受容体は、膵β細胞をふやす成長因子の量を調節するとともに、オートファジーという細胞内のリサイクルの仕組みをコントロールする、2つの異なる作用で膵β細胞機能を調節していることが明らかになりました。

血糖値を下げるホルモンであるインスリンは、膵臓の膵島という組織に存在する膵β細胞から分泌されます。糖尿病では、この膵β細胞からインスリンが十分に出せなくなると、血糖値のコントロールが難しくなります。したがって膵β細胞を守り、数を増やし、正常に作用させるかが糖尿病治療にむけて重要なテーマとなっています。

今回の研究では、膵β細胞に存在する「IGF2R(インスリン様成長因子2受容体)」の役割に注目しました。IGF2Rは、成長因子IGF2を取り込み分解するほか、酵素をリソソームに運ぶ働きを持ちます。これまで膵β細胞のインスリン分泌や増殖への直接的な関与は不明でしたが、今回、IGF2Rが膵β細胞の増殖とインスリン分泌能の維持に重要であることが明らかになりました。具体的には、IGF2Rを欠損させるとIGF2が蓄積し一時的に細胞増殖は増えるものの、インスリン分泌は低下し、肥満や糖尿病状態では逆に膵β細胞数が減少しました。その背景にはオートファジー(細胞のリサイクル機構)の低下が確認されました。また、糖尿病ドナー由来膵島では、IGF2R mRNAに関わるm6Aメチル化のエピゲノム修飾が低下しており、IGF2Rの発現調節異常が糖尿病の病態に関与する可能性が示唆されました。

本研究により、IGF2Rは短期的には細胞増殖を抑える一方、長期的にはオートファジー維持を介して膵β細胞を守る二面的な役割を持ち、糖尿病進展に深く関与する分子であることが分かりました。今後、IGF2Rを標的とした新たな糖尿病治療法の開発が期待されます。

Paper information

“Regulatory roles of IGF2R in insulin secretion and adaptive β-cell proliferation”
白川純, Dario F. De Jesus, 都野貴寛, Giorgio Basile, 井上亮太, 高谷具純, 西山晃, Erin R. Okawa, 田村智彦, 寺内康夫, Rohit N. Kulkarni.
Diabetes誌(American Diabetes Association:米国)

公開日:2025年10月3日

Online URL

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41042627/

Lab HP

https://diabetes.imcr.gunma-u.ac.jp/

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