群馬大学・秋田大学連携グローバルCOEプログラム、生体調節シグナルの統合的研究


リーダー挨拶

群馬大学生体調節研究所 小島 至

群馬大学と秋田大学は大学の枠を超えて連携し、グローバルCOEプログラム「生体調節シグナルの統合的研究」をスタートさせることになりました。この拠点計画では、群馬大学と秋田大学が連携し、生体におけるシグナル伝達機構を多角的・多面的なアプローチにより解明することを目指しています。群馬大学は、これまで21世紀COEプログラム「生体情報の受容伝達と機能発現」を実施し、生体の2大調節系である神経系・内分泌系におけるシグナル産生・受容・伝達機構を研究して大きな成果を上げてきました。一方、秋田大学は21世紀COEプログラム「細胞の運命決定機構」を実施し、免疫系やがんにおけるシグナル伝達機構の研究で大きな成果を上げてきました。この群馬大学と秋田大学の2つの拠点には、シグナル伝達という共通のテーマがあり、研究対象となるシグナル伝達関連の分子や細胞レベル・個体レベルでの解析には多くの共通点があります。一方、両者の研究分野は「内分泌系・神経系」と「免疫系・がん」と相補的な関係になっています。したがって両拠点が有機的に連携することにより、生体における3大調節系すなわち内分泌系・神経系・免疫系を統合的に研究することが可能になると予想されます。これまで個別の調節系におけるシグナル伝達研究は多くの研究者により精力的に行われてきましたが、系の枠を超えた複雑な調節機構の系統的な研究はほとんどありません。生体調節系の破綻により様々な病態が生じることはよく知られていますが、この複雑な病態を解明するためには調節系の枠組みを超えた研究が重要であることは明らかです。例えば動脈硬化の病態においては、血管を場としてホルモン、サイトカイン、増殖因子などが複雑なクロストークをしながら病態を形成しています。またメタボリック症候群発症の鍵を握る脂肪細胞由来のホルモン産生には、脂肪組織を場とした炎症反応が重要な役割を果たしており、炎症性サイトカインとホルモンが絡む複雑なシグナル伝達が病態の中心になっています。さらに中枢における食欲調節では、神経伝達物質とレプチン、グレリン、ネスファチンなど食欲調節ホルモンのクロストークが重要ですし、またそこに炎症性サイトカインも影響を及ぼします。これらの病態を明らかにするためにも、3大調節系の枠組を超えたシグナル伝達機構の研究がきわめて重要です。このような背景をふまえて、本グローバルCOE拠点計画においては、群馬大学・秋田大学が連携し、3大調節系の枠を超えたシグナル伝達機構の解明を目指します。またそれを通じて、複雑な病態生理の解明を目指しています。両大学の研究者が有機的に共同研究を行うために、両大学にまたがる調節シグナル連携解析ステーションを設置し、研究リソースの共有化、研究グループ間の情報交換を進めて拠点内の研究連携を深めます。また国際的なシンポジウムや若手国際セミナーの開催などを行い拠点のアクティビティーを国内外に発信していきます。また本拠点計画においては、両大学の医学系研究科が連携し、大学院生やポスドクなどの若手研究者の育成を進めます。若手研究者を対象とした技術コースやワークショップを開催するとともに、国際化のための様々な支援を行っていく予定です。これらを通じて、2つの大学の連携による教育研究拠点を形成していく予定です。