群馬大学・秋田大学連携グローバルCOEプログラム、生体調節シグナルの統合的研究


 

群馬大学長 高田邦昭

平成19年度に採択された「生体調節シグナルの統合的研究」は、群馬大学が秋田大学と連携して行う生命科学分野でのグローバルCOEプログラムです。本プログラムは、「社会のあらゆる分野で国際的に活躍できる若手研究者育成機能の抜本的強化と国際的に卓越した教育研究拠点形成を図る。」という目的のもとに文部科学省によって強力に推進されているものです。生命科学分野では全国から13プログラム(国立大学11プログラム、公立大学及び私立大学各1プログラム)が採択されています。

群馬大学の立地する群馬県では、甲状腺の病気がしばしば見られたことから、甲状腺や甲状腺ホルモンに関する研究が始まりました。この甲状腺研究者を核として、ホルモン研究を行う研究者が少しずつ自然発生的に集まり、内分泌学研究グループが形成されました。昭和26年には医学部に附属内分泌研究施設ができ、これを発展させた大学附置研究所として昭和38年には内分泌研究所が誕生しました。日本で唯一のホルモン研究所として、内分泌研究所では広く内分泌学研究を行いましたが、遺伝子レベルや細胞レベルでの新しい研究の流れを取り込み、平成6年には生体調節研究所へと改組拡充されました。平成16年には遺伝子実験施設を附属生体情報ゲノムリソースセンターとして取り込み、さらにゲノム研究の強化も図ってきました。内分泌研究所や生体調節研究所の時代を通じて、医学部・大学院医学研究科とともに糖尿病をはじめとする内分泌・代謝疾患やその分子細胞レベルでの大学院教育・研究を推進してきました。現在は大学院医学系研究科の協力講座として多くの大学院学生の研究指導を行っています。

21世紀COEプログラム「生体情報の受容伝達と機能発現」では、生体調節研究所や医学部の内分泌・代謝研究グループを中心として、これに脳・神経研究のグループが加わりました。内分泌系と神経系という一見異なる系も、細胞や分子レベルでは多くの共通点があります。例えば、神経細胞でのシナプス小胞放出と、膵臓ランゲルハンス島ベータ細胞でのインスリン分泌において、ともに小胞形成やエキソサイトシスで類似のメカニズムのもとに調節が行われています。そこで共通の研究グループを形成し、相互にコミュニケーションを密にし、刺激しあって向上を図ろうとしました。このような取り組みもあって、この21世紀COEプログラムは高い評価を得ました。

グローバルCOEプログラムへの申請にあたっては、21世紀COEプログラムの成果を振り返りつつそのコンセプトをさらに発展させ、将来の研究発展の方向を見定めました。そして同じく21世紀COEプログラムを高い評価のもとに終え、同じ方向を目指していた秋田大学と連携することとなりました。群馬大学では内分泌、代謝、神経系を、秋田大学では免疫、腫瘍を中心とした研究に特色がありました。神経、内分泌、免疫系は生体の三大調節系であるとともに細胞レベルにおいてはシグナルの受容、伝達をはじめとして共通のメカニズムが働いていることが明らかになりつつあります。このような中で相互に情報交換し、お互いに補完し合いながら研究と大学院教育を行っています。グローバルCOEプログラムは平成19年度から始まりましたが、秋田大学との日々の交流を基盤とし、共同のシンポジウム、学位審査などを行うことで、それぞれが単独ではなし得なかった成果が得られています。中間評価においても、「現行の努力を継続することによって、当初の目的を達成することが可能と判断される。」と評価されています。

平成22年度には21世紀COEやグローバルCOEをはじめとする支援による蓄積を基盤とし、文部科学省の内分泌・代謝学共同利用・共同研究拠点に選定されました。内分泌・代謝学分野における研究者コミュニティー交流の中心として先端的研究推進と次世代を担う人材育成に邁進しています。

このように、本グローバルCOEプログラムを遂行することにより、群馬大学の伝統である内分泌・代謝学や神経科学における世界レベルでの教育研究拠点としての機能を一層強化し、世界に研究成果を発信するとともに優れた人材を輩出する拠点形成が可能となると信じています。