佐々木努、松居翔、橋本博美、北村忠弘(群馬大学生体調節研究所) 木下善弘、木下久慈、天野直二(信州大学医学部精神医学講座) 角田茂(信州大学ヒト環境科学研究支援センター) 岩崎有作、矢田俊彦(自治医科大学生理学講座統合生理学部門) 木下俊弘(北里大学薬学部薬品分析学教室)
概要
D-セリンは、神経細胞の興奮度合を伝える役割を果たすNMDA受容体の機能を補佐します。NMDA受容体は摂食行動の調節に関与することが示唆されていましたが、D-セリンが摂食行動に与える影響については全く報告がありませんでした。
そこで、D-セリンを混ぜた水をマウスに飲ませて摂食行動を観察しました。その結果、食事の選択肢がある時は、D-セリンを飲んでいるマウスは、本来マウスが好む食事を食べずに、好まない方の食事を食べるようになることを発見しました。この効果は食事中の栄養の配合割合や、栄養状態の異なる条件下でも、認められました。ただし、食事の選択肢がない場合は餓死する例も認められました。つまり、D-セリンはマウスがその時食べたいと思っている食事の摂取を抑制します。
D-セリンは発酵食品や海の甲殻類などの食品成分にも含まれており、これらが食事の好みと食欲に影響を与えている可能性が示唆されます。
原著情報
N-methyl-d-aspartate receptor coagonist d-serine suppresses intake of high-preference food.
Sasaki T, Kinoshita Y, Matsui S, Kakuta S, Yokota-Hashimoto H, Kinoshita K, Iwasaki Y, Kinoshita T, Yada T, Amano N, Kitamura T.
Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol. 2015;309(5):R561-75. Epub 2015 Jul 8.
オンラインURL
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26157056