群馬大学生体調節研究所(群馬県前橋市、佐藤健所長)の、泉哲郎教授らは、肥満やそれに伴って起きる糖尿病に対する、新奇治療法につながる知見を見出しました。
近年、世界中で、肥満や、それに伴って起きやすい糖尿病を有する人が急増しています。これは、食生活の西洋化、すわりがちな仕事・生活による運動不足など生活習慣の変化と、様々な遺伝要因から成る、複合的な原因によって起こり、食事や運動の改善といった治療法のみでは克服困難です。また、現在、米国などで処方されている食欲を減退させる薬物は必ずしも十分な効果を上げていません。肥満は、脂肪細胞に脂質が過剰にたまった状態で、これを効率よく分解することができれば、原因に依らない肥満治療法となる可能性があります。私たちは、これまでの研究で、脂肪細胞に高発現するALK7という受容体の機能が喪失したマウスでは、肥満状態の時のみ脂肪分解を促進し、脂肪重量を軽減させることを示してきました。今回、ALK7に対する中和抗体を、遺伝性肥満マウスあるいは高脂肪食を負荷した食餌誘導性肥満マウスに投与したところ、脂肪重量が半減し、肥満に伴う耐糖能、インスリン感受性の低下が改善することがわかりました。また、本抗体の投与により脂肪細胞のALK7の機能を抑制すると、そのリガンド(受容体に特異的に結合して活性化させる物質)である、脂肪組織マクロファージから産生されるGDF3の発現・分泌も低下することがわかり、その分子メカニズムも明らかにしました。本研究によって、肥満や糖尿病を有するヒト患者に対する抗ALK7治療法への応用に繋がることが期待されます。
本研究の成果は1月10日(火)(アメリカ東部標準時刻)に米国科学誌JCI Insightにおいて公開されました。学術的に卓越した治療への応用性の高い研究内容で、大きな社会貢献が期待されることから,お知らせいたします。
・雑誌名:JCI Insight誌(米国)
・公開日:2023年1月10日(アメリカ東部標準時)
・タイトル:”Targeting activin receptor-like kinase 7 ameliorates adiposity and associated metabolic disorders”
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