増田 真之佑1#、小松 哲郎1#、Safiya Atia1、鈴木 智大1、林 真友子1、豊田 敦2、木村 宏3、稲垣 毅1*(1. 群馬大学・生体調節研究所・代謝エピジェネティクス分野、2. 国立遺伝学研究所、3. 東京科学大学)
About
鉄は、JmjC型ヒストン脱メチル化酵素だけでなくDNA脱メチル化酵素やRNA脱メチル化酵素にとっても不可欠な補酵素であり、広範なエピゲノム制御に関与しています。本研究では、私たちが最近明らかにした「エピゲノム酵素の鉄依存的脱メチル化が脂肪細胞分化における転写制御に不可欠である」という知見に基づき、H3K9の脱メチル化酵素であるJMJD1Aに着目しました。そして、脂肪細胞分化過程においてJMJD1Aが鉄依存的にH3K9me2の脱メチル化を介して制御する標的遺伝子の同定を行いました。その結果、この鉄依存的な脱メチル化を介した転写制御は比較的構造の緩いAコンパートメントにおいて顕著に認められ、転写開始点(TSS)周辺のキロベーススケールでのH3K9me2レベルをJMJD1Aが低下させることにより、PPARシグナル伝達や脂質代謝に関与する遺伝子群を鉄依存的に標的としていることが示唆されました。
Paper information
Masuda S, Komatsu T, Atia S, Suzuki T, Hayashi M, Toyoda A, Kimura H, Inagaki T. Iron-dependent JMJD1A-mediated Demethylation of H3K9me2 Regulates Gene Expression During Adipogenesis in a Spatial Genome Organization-dependent Manner. Genes to Cells 2025
(doi.org/10.1111/gtc.70023)
Online URL
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/gtc.70023