松永耕一 1.2*, 本田香織 3, Muneeb Ali 4, Abdul Hameed 5, 井上亮太 1, 都野貴寛 1, Tatsuya Kin 6, A. M. James Shapiro 6, 大日方英 7, 近藤恭光3, Zaheer Ul-Haq 4,8, 長田裕之 3,9, 泉哲郎 2*, 白川純 1* (1. 群馬大学生体調節研究所代謝疾患医科学分野、2. 群馬大学生体調節研究所遺伝生化学分野、3. 理化学研究所環境資源科学研究センターケミカルバイオロジー研究グループ、4. カラチ大学 国際化学・生物科学センター H.E.J. 化学研究所、5. ジアウディン大学 分子医学カレッジ、 6. アルバータ大学臨床膵島研究室、 7. 群馬大学コアファシリティ総合センター (CoMTeCC) ライフサイエンス分野、 8. カラチ大学 国際化学・生物科学センター Dr.パンジュワニ分子医学・創薬研究センター、 9. 微生物化学研究所 *責任著者)
About
代謝疾患医科学分野の松永耕一助教、白川純教授、泉哲郎本学名誉教授らの研究グループは、理化学研究所等との共同研究により、インスリンを分泌する膵β細胞に作用し、ブドウ糖(血糖値)の上昇に応答したインスリン分泌を促進する新規化合物DPEUを発見しました。
研究グループは、インスリン分泌を指標としたハイスループットスクリーニングを行い、インスリン分泌を強く高める化合物DPEUを同定しました。DPEUはマウス、ラット、ヒト由来の膵β細胞でいずれにも作用し、ブドウ糖濃度(血糖値)が高いときにのみインスリン分泌を増強しました。さらに詳細な解析により、DPEUはミトコンドリア外膜に存在するチャネルたんぱく質VDAC(電位依存性アニオンチャネル)に直接結合することが明らかになりました。膵β細胞では、取り込まれたブドウ糖がミトコンドリアで代謝され、その結果生じる細胞質内ATP濃度の上昇がインスリン分泌の引き金になります。DPEUはVDACの機能を高めることで、ブドウ糖刺激によりミトコンドリア内で産生されたATPを、効率よく細胞質側へ流出させ、インスリン分泌を促進することが分かりました。このようにDPEUは、ミトコンドリアの「エネルギーの出口」ともいえるVDACを介したATPの移動を促進することで、ブドウ糖応答性のインスリン分泌を高める、これまでにない作用機序を持つ化合物です。
血糖値が高いときにインスリン分泌を増強するというDPEUの特性から、低血糖リスクの少ない新たなインスリン分泌促進薬の開発につながる可能性がります。またVDACを介したミトコンドリアから細胞質へのATP輸送を標的するという観点から、糖尿病治療における新たな創薬戦略を提示する成果となりました。
Paper information
Kohichi Matsunaga, Kaori Honda, Muneeb Ali1, Abdul Hameed, Ryota Inoue, Takahiro Tsuno, Tatsuya Kin, A. M. James Shapiro, Hideru Obinata, Yasumitsu Kondoh, Zaheer Ul-Haq, Hiroyuki Osada, Tetsuro Izumi, and Jun Shirakawa. Small-molecule modulation of VDAC enhances glucose-stimulated insulin secretion by promoting ATP flux Cell Chem Biol. in press.
Online URL
https://www.cell.com/cell-chemical-biology/abstract/S2451-9456(26)00368-5








