群馬大学・秋田大学連携グローバルCOEプログラム、生体調節シグナルの統合的研究


メンバー紹介

山田 祐一郎 氏名 山田 祐一郎 YAMADA YUICHIRO
所属 秋田大学医学部内科学講座内分泌・代謝・老年医学分野・教授
E-mail E-mail
ラボURL http://www.med.akita-u.ac.jp/~rounen/index.html

研究テーマ

生体各所の細胞ではそれぞれ細胞固有の代謝システムを有しており、細胞内代謝に密接に関連してその機能を発揮する。一方、個々の細胞・組織は、生体としての代謝の恒常性を維持するように緊密に連携している。当研究室では、腸管を生体の代謝における最初のステップとして消化吸収のみならずシグナルを全身に向けて発信する起点と捉え、栄養素の摂取とともに分泌されるインクレチンと総称される消化管ホルモン(GIP や GLP-1)の生理的な意義や病態における役割を研究している。インクレチンは、もともと摂食後の膵β細胞からのインスリン分泌増強に関与する消化管因子と考えられてきたが、我々を始めとする国内外における分子生物学ならびに発生工学などを用いた研究の進展によって、非常に多彩な生理活性があることがわかってきた(図1)。

GIP は、その受容体が膵β細胞や脂肪細胞、骨芽細胞などに発現し、いずれの細胞においても、摂取した栄養素を生体内に蓄積する上で重要な役割を担っていることを解明している(Proc Natl Acad Sci USA 1999Nature Med 2002Mol Endocrinol 2006など)。したがって、現代のような飽食の時代にはGIPシグナルを抑制することが肥満・メタボリックシンドロームなどの改善に繋がることを示してきた。GLP-1は、その受容体が膵β細胞以外に、中枢神経系や胃などに発現している。インスリン分泌促進・食欲抑制・胃運動抑制作用はいずれも血糖降下に繋がることから、糖尿病治療薬としての開発が進んでいるが、その生理的な意義について研究を進行しているが、GIPとGLP-1が異なる生理的な役割を有していることは明らかである(J Clin Invest 2007など)。

イクレチンの多彩な生理作用

糖尿病治療薬の新たなカテゴリーとして注目されるインクレチン関連薬は、インクレチン・ミメティクス(GLP-1受容体アゴニスト、GLP-1シグナルを増強)とインクレチン・エンハンサー(DPPIV阻害薬、GIPとGLP-1シグナルをいずれも増強、Diabetes 2004)に大別されるが(図2)、当研究室の成果は、日本人糖尿病の新たな治療戦略に寄与するものと期待されている。

インクレチンを用いた糖尿病治療戦略