群馬大学・秋田大学連携グローバルCOEプログラム、生体調節シグナルの統合的研究


メンバー紹介

和泉 孝志 氏名 和泉 孝志 IZUMI TAKASHI
所属 群馬大学医学系研究科(医科学専攻)・機能分子生化学分野・教授
E-mail E-mail
ラボURL http://www.med.gunma-u.ac.jp/molbiochem/

研究テーマ

生理活性脂質の代謝と受容体機能の解析

生理活性脂質は、膜のリン脂質から刺激に応じて産生され、近傍細胞の特異的受容体(Gタンパク共役型受容体:GPCR)に作用してシグナルを伝える。その生体機能は多岐にわたるが、主なものを列記すると、1. 炎症反応、2. アレルギー・免疫反応、3. 中枢神経作用、4. 呼吸循環調節作用、5. 分化・増殖作用、6. 生殖への関与などである。

当分野では、種々の刺激による細胞膜リン脂質の分解と引き続いて生じる生理活性脂質産生の制御機構の解明、生理活性脂質受容体を介した細胞内シグナル伝達機構及び細胞機能の解析を行っている(図1)。具体的には、アラキドン酸代謝物であるロイコトリエン、マリファナ受容体の生理的リガンドであるアナンダミドや2-アラキドニルグリセロール、血清中の主な細胞増殖因子であるリゾホスファチジン酸、リゾリン脂質分解酵素であるリゾホスホリパーゼについての研究を行っている。

最近、ストレス誘導性のGPCRであるG2Aのリガンドが、9-HODE(リノール酸酸化物の1つ)や11-HETE(アラキドン酸酸化物の1つ)などの酸化遊離脂肪酸であることを発見した。これは、リノール酸酸化物がGPCRのリガンドとして作用する最初の報告である。G2Aを発現している培養細胞に9-HODEを添加すると、サイトカイン産生や細胞増殖の抑制が生ずる(図2)。現在、酸化遊離脂肪酸の産生機序、G2Aを介する細胞内シグナル、G2Aの発現誘導機構の解析を行っており、これらを通じて9-HODE-G2Aシステムの生体機能の解明を目指している。

ゲノムの解析が進み、多くのGPCR候補遺伝子の存在が明らかになった。その中で、まだリガンドが同定されていない受容体(オーファン受容体)がある。当分野ではオーファン受容体のリガンドの発見と新規生理活性脂質の発見を目指している。そのためには、新しいGPCRのリガンドスクリーニング法の開発が必要と考え、表面プラズモン共鳴(SPR)やバイオルミネッセンス共鳴エネルギー転移アッセイ(BRET)、カンチレバなどを利用したアッセイ系の開発にも取り組んでいる。

生理活性脂質の産生と作用 酸化遊離脂肪酸とG2A