群馬大学・秋田大学連携グローバルCOEプログラム、生体調節シグナルの統合的研究


メンバー紹介

樗木 俊聡 氏名 樗木 俊聡 OHTEKI TOSHIAKI
所属 秋田大学大学院医学系研究科生体防御学分野・教授
E-mail E-mail
ラボURL http://www.med.akita-u.ac.jp/~kisei/

研究テーマ

免疫系は、さまざまな病原体の侵襲から生体を守るという古典的な概念にとどまらず、個体恒常性維持に必須の監視システムと理解されている。獲得免疫系が発現する抗原認識受容体は1016〜1018オーダーともいわれ、ヒトのからだを構成する遺伝子が104オーダーであることと比較すると、驚異的な多様性である。この多様性が免疫学的記憶を含む抗原特異的免疫反応を支える本体である。樹状細胞は、自然免疫系のみならず抗原特異的免疫反応を発動させるために重要な細胞であり、我々の研究室では同細胞の分化・機能発現を主なテーマとしている。最近の研究成果を以下に紹介する。

1. 樹状細胞によるIgA誘導機構の解明1)
「なぜIgAに偏向した抗体生産が粘膜関連リンパ組織で起こるのか?」という生物学的に最も重要かつ長年に渡る謎を解いた研究。粘膜関連リンパ組織ではTNF-α/iNOS生産樹状細胞(Tip-DC)が常在菌叢の刺激により誘導され、同樹状細胞の生産する一酸化窒素(NO)が、抗体生産をIgAに偏向させる原因になっていることを明らかにした(図1)。

2. 樹状細胞による新規免疫賦活機構の解明2)
異なる2つの樹状細胞サブセット、従来型樹状細胞と形質細胞様樹状細胞がインターロイキンー15依存性にクロストークを行うことによって、自然免疫系が活性化されるという、これまでの既成概念とは異なる新規免疫賦活機構を同定した。

3. 樹状細胞による炎症反応誘導機構の解明3)
樹状細胞の生産するインターロイキンー15が、炎症性サイトカインやケモカインの誘導を介して、エンドトキシンショックや肉芽腫形成の原因になることを明らかにした。

4. 樹状細胞前駆細胞の同定4)
樹状細胞(従来型樹状細胞と形質細胞様樹状細胞)の前駆細胞を同定した。

Tip-DCによるigA誘導機構

業績

  • Tezuka H, et al. Nature 448: 929-933, 2007.
  • Kuwajima S, et al. Nature Immunol 7: 740-746, News & Views 699-700, 2006.
  • Ohteki T, et al. J Exp Med 203: 2329-2338, 2006.
  • Onai N, et al. Nature Immunol in press, 2007.