群馬大学・秋田大学連携グローバルCOEプログラム、生体調節シグナルの統合的研究


メンバー紹介

的崎 尚 氏名 的崎 尚 MATOZAKI TAKASHI
所属 群馬大学生体調節研究所・教授
E-mail E-mail
ラボURL http://imcr.showa.gunma-u.ac.jp/lab/brc/index.html

研究テーマ

蛋白質チロシンリン酸化は、細胞の増殖・運動・接着などの基本機能、さらに神経系や免疫系の高次機能を支える重要なシグナル伝達系の1つです。私共は、特にチロシン脱リン酸化反応を担うチロシンホスファターゼ(PTPase)の生理機能・作用機構の解析を中心に研究を進めています。その研究成果が、がんや神経疾患、代謝・内分泌疾患、動脈硬化等、様々な疾患の診断や治療に応用・還元されるような研究を目指しています。

1.細胞間シグナル伝達機構CD47-SHPS-1系の生理機能解明

私共は、チロシンリン酸化を受ける膜蛋白質SHPS-1が、細胞質型PTPaseであるSHP-1、SHP-2とシグナル伝達系を形成することを見出し、さらにこのSHPS-1が、別の膜蛋白質CD47と細胞間シグナル伝達機構CD47-SHPS-1系を形成することを明らかにしています。(図1)。多細胞生物を形成する多数の細胞は互いにシグナルを受け渡すことで協調的に機能していますが、CD47-SHPS-1系はそのような細胞間シグナル伝達機構の1つです。これまで私共は、このCD47-SHPS-1系がチロシンリン酸化シグナル、低分子量G蛋白質シグナルを介して、細胞の運動、マクロファージ貪食、神経突起形成を制御することを示してきました。現在、遺伝子破壊(KO)マウスを用いた個体レベルの解析を進め、CD47-SHPS-1系が免疫反応や脳機能の制御に関与することを明らかにしつつあります。(図2)。一方で、自己免疫疾患をモデルに、CD47、SHPS-1の人工的リガンドを用いた疾患治療法の開発にも着手し、研究成果の医療応用に取り組んでいます。

細胞間シグナル伝達機構CD47-SHPS-1系マウス脊髄のヘマトキシリン

2. 受容体型チロシンホスファターゼの新規機能解明

私共は、独自に見出した受容体型PTPase SAP-1の生理機能解析に取り組んでいます。すでにSAP-1が腸上皮細胞の微絨毛に特異的に発現・局在することを明らかにしており、現在、KOマウスを用いて、その生理機能解析を進めています。一方で、SAP-1とファミリーを形成する複数のPTPaseについても並行して解析を進め、これらのPTPaseのいずれもが、神経細胞や血管内皮細胞などで極性を持って局在することを明らかにしつつあります。現在、これらPTPaseの局在化のメカニズム解明に取り組むと共に、個々のPTPaseのKOマウスを用いた生理機能の解析を進めています。