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群馬大学 生体調節研究所

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細胞の成長とストレス応答の切り替えを行なう新規メカニズムの発見

Erin Jonasson, Valentina Rossio, 畠山理広 (ブランダイス大学生物学部) 阿部充宏, 大矢禎一(東京大学・新領域創成科学研究科) 吉田知史(群馬大学 生体調節研究所・細胞シグナル分野/未来先端研究機構・内分泌代謝シグナル伝達学部門)

概要

発癌遺伝子であるRho1 GTPaseは快適な細胞環境において細胞成長を促進する。一方で細胞がストレスに晒されるとRho1は細胞成長を阻害しPKC-MAP kinase経路を活性化することでストレス抵抗性を誘導する。Rho1がどのようにして「細胞の成長」と「ストレス応答」を切り替えているのかはこれまで謎であった。
本研究では Rho1の新規制御因子として腫瘍抑制遺伝子であるタンパク質脱リン酸化酵素PP2Aを同定した。至適環境ではPP2AはZds1と呼ばれるアダプタータンパク質を介してRho1と結合し、 その結果Rho1は細胞成長に必要な因子を優先的に活性化させるようになった。さらにPP2Aは細胞成長に必要な因子を活性化するだけでなくRho1のGAPであるSac7タンパク質を安定化させることでPKC-MAP kinase経路を阻害することが明らかになった。一方で細胞がストレスに晒された状態になると PKC-MAP kinase経路が優先的に活性化され、このときPKC-MAP kinaseがPP2Aの機能を抑制した。
RhoやRasといった低分子量GTPaseは多数の標的を制御することが知られているが細胞内外からの刺激に応答して特定の標的タンパク質のみを優先的に活性化する仕組みは殆ど理解が進んでいなかった。本研究で明らかになったPP2Aの細胞成長における新規な役割とPP2AとPKCの拮抗的な相互抑制作用はRho1の下流アウトプットは「細胞の成長」か「ストレス応答」の一方だけになるように切り替える仕組みを説明するものだと考えられる。
本研究成果は米科学誌 Journal of Cell Biology(Rockefellor University Press) 2016年1月4日号に掲載され、注目論文としてIn this issueで紹介されました。
PP2Amodel(J)

原著情報

"Zds1/Zds2-PP2ACdc55 complex specifies signaling output from Rho1 GTPase"
Erin Jonasson, Valentina Rossio, Riko Hatakeyama, Mitsuhiro Abe, Yoshikazu Ohya, Satoshi Yoshida*
The Journal of Cell Biology (2016) Vol 212. No. 1:51-61.

オンラインURL

http://jcb.rupress.org/content/212/1/51.abstract

研究室URL

http://www.giar.gunma-u.ac.jp/program/program_st/

 

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